HPE(ヒューレット・パッカード・エンタープライズ)は、世界をリードするITプラットフォーム企業として知られています。
エンタープライズ領域におけるサーバー、ストレージ、ネットワーク機器、そしてクラウドサービスなど、幅広いビジネスソリューションを提供しています。
多くの企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する中で、その基盤を支える重要なパートナーとしての地位を確立しています。
本記事では、HPEの成り立ちから現在の主力事業、競合他社と比較した際の強みについて詳しく解説します。
HPE(ヒューレット・パッカード・エンタープライズ)とは
HPEは、2015年11月に旧ヒューレット・パッカード(HP)が2つの独立した上場企業に分割されて誕生しました。
PCやプリンター事業を継承したのが「HP Inc.」であり、法人向けのインフラストラクチャやソフトウェア、サービスを継承したのが「HPE」です。
本社はアメリカ合衆国テキサス州スプリングにあり、世界中の企業や政府機関に対してITソリューションを提供しています。
もともとのヒューレット・パッカードは、1939年にビル・ヒューレットとデイヴィッド・パッカードによって設立された伝説的な企業です。
シリコンバレーの誕生に深く関わったその革新的なDNAは、現在のHPEにも色濃く受け継がれています。
会社分割の背景と目的
IT業界の劇的な変化に対応するため、旧HPは組織をスリム化し、意思決定のスピードを上げる必要がありました。
コンシューマー向けのデバイス事業と、複雑な要件が求められるエンタープライズ事業を切り離すことで、それぞれの市場に最適化した経営が可能になりました。
HPEは分割後、ハイブリッドクラウドやエッジコンピューティングといった、より高度なインフラストラクチャ領域へ集中投資を行っています。
特に「データの価値を最大化する」というビジョンのもと、企業のデータセンター戦略に深く関与しています。
HPEの主な事業内容
HPEの事業は、ITインフラのハードウェア販売から最先端のクラウドサービスまで多岐にわたります。
ここでは、同社の屋台骨を支える主要なビジネスセグメントについて見ていきましょう。
コンピューティング(サーバー事業)
HPEの主力製品といえば、世界シェアでもトップクラスを誇る「ProLiant」サーバーシリーズです。
タワー型、ラックマウント型、ブレード型など、あらゆる企業の規模や用途に応じたラインナップを展開しています。
最近では、AI(人工知能)の学習や推論に特化したGPU搭載サーバーの需要が急増しており、同社の強みとなっています。
サーバー自体にセキュリティ機能を組み込んだ「シリコン・ルート・オブ・トラスト」技術は、業界でも高く評価されています。
ストレージ事業
企業が保有する膨大なデータを管理・保護するためのストレージ製品も、HPEの重要事業の一つです。
「HPE Alletra」や「HPE MSA」などの製品群があり、高速なデータアクセスを実現するオールフラッシュ構成が主流となっています。
AIを活用した予測分析ツールである「HPE InfoSight」を組み合わせることで、障害を未然に防ぐインテリジェントな運用を可能にしています。
従来の「ただデータを貯める箱」から、「自律的に管理されるデータプラットフォーム」への進化を遂げています。
インテリジェントエッジ(HPE Aruba Networking)
ネットワーク事業においては、買収したAruba Networksのブランドを中心に「HPE Aruba Networking」を展開しています。
Wi-Fi 6/6Eに対応した無線LAN製品や、キャンパススイッチ、SD-WANソリューションが非常に強力です。
ゼロトラストセキュリティの考え方を取り入れたネットワーク構築が可能であり、テレワークや拠点の分散化が進む現代に適応しています。
また、エッジ側で発生したデータをその場で処理するエッジコンピューティングの基盤としても重要な役割を担っています。
HPC(ハイパフォーマンス・コンピューティング)とAI
スーパーコンピューター(スパコン)の分野でも、HPEは圧倒的な存在感を示しています。
老舗スパコンメーカーであるCray社の買収により、世界最速クラスの計算能力を持つシステムを提供可能になりました。
気象予報や創薬研究、金融シミュレーションなど、極めて高度な計算が必要な分野でHPEの技術が活用されています。
生成AIの開発に必要な大規模計算基盤についても、NVIDIAなどのパートナー企業と連携して包括的なソリューションを構築しています。
次世代の柱「HPE GreenLake」
現在のHPEが最も力を入れているのが、「HPE GreenLake」と呼ばれるエッジ・トゥ・クラウド・プラットフォームです。
これは、オンプレミスの環境にHPEの機器を設置しながら、クラウドのように「従量課金制」で利用できるサービスです。
HPE GreenLakeのメリット
企業が自社でハードウェアを購入する場合、多額の初期投資(CAPEX)が必要になります。
しかしGreenLakeを利用すれば、使った分だけを支払う運用費用(OPEX)形式での支払いが可能になります。
IT資産を所有するリスクを抑えつつ、オンプレミス特有のセキュリティや低遅延というメリットを同時に享受できます。
必要なリソースを柔軟に拡張できるため、ビジネスの急成長にも柔軟に対応できるのが大きな特徴です。
ハイブリッドクラウドの実現
HPE GreenLakeは、パブリッククラウド(AWSやAzureなど)とオンプレミス環境を一元管理する統合プラットフォームとして機能します。
一つの管理画面から、社内のサーバーも外部のクラウドも同様の操作感で制御することができます。
これにより、複雑化しがちなハイブリッドクラウド環境の運用負荷を劇的に軽減することが可能です。
HPEの製品・サービスの強み
競合するサーバーメーカーやクラウドベンダーの中で、HPEが選ばれる理由には明確な強みがあります。
世界最高水準のセキュリティ
HPEは、サーバーのハードウェア層からセキュリティを確保する「Silicon Root of Trust(シリコン・ルート・オブ・トラスト)」を開発しました。
マザーボード上のチップに独自のデジタル指紋を焼き付けることで、不正なファームウェアの実行を物理的に防ぎます。
サイバー攻撃が高度化する中で、ハードウェアの信頼性を根源から保証するこの技術は、金融機関や政府機関から絶大な信頼を得ています。
AI主導の運用保守「HPE InfoSight」
世界中から収集されたサーバーやストレージの稼働データをAIが分析し、問題が発生する前に予測する仕組みを提供しています。
過去のトラブル事例をもとに、構成の不備や将来の容量不足を事前に通知してくれます。
この「自律型データセンター」の構想により、IT管理者の保守作業時間を大幅に短縮できる点が大きな差別化要因です。
サステナビリティへの取り組み
HPEは環境負荷の低減にも積極的に取り組んでおり、製品のリサイクルや長寿命化を推進しています。
中古機器の再整備を行う「アセットアップサイクリングサービス」などを通じて、サーキュラーエコノミー(循環型経済)を支援しています。
ITインフラの導入が環境に与える影響を気にする企業にとって、HPEの姿勢は高く評価されるポイントです。
主要競合他社との比較
HPEの立ち位置をより明確にするために、主要な競合他社との比較を以下の表にまとめました。
| 比較項目 | HPE | Dell Technologies | Cisco Systems |
|---|---|---|---|
| 主力領域 | ハイブリッドクラウド・サーバー | PC・サーバー・ストレージ | ネットワーク・セキュリティ |
| クラウド戦略 | GreenLakeによる従量課金重視 | APEXによる広範なインフラ提供 | SaaSおよびクラウド管理型ネットワーク |
| 強み | セキュリティ・スパコン・エッジ | サプライチェーン・圧倒的な販売力 | デファクトスタンダードのNW技術 |
HPEは単なるハードウェア販売にとどまらず、サービスとしてのIT提供に早くから舵を切っているのが特徴です。
特にハイブリッド環境での管理のしやすさにおいて、一歩リードしていると言えるでしょう。
HPEの将来展望とAIへの対応
今後、HPEはさらにAIネイティブな企業へと進化しようとしています。
2024年初頭には、ネットワーク機器大手のJuniper Networksの買収合意を発表しました。
これにより、AIを活用したネットワーク運用(AIOps)の分野で、さらに強固なポートフォリオを持つことになります。
また、プライベートクラウド上で独自のAIモデルを構築したい企業向けに、インフラとソフトウェアを統合したパッケージも強化しています。
「データがある場所でコンピューティングを行う」という同社のエッジ戦略は、AI時代においてますます重要性を増していくでしょう。
まとめ
HPE(ヒューレット・パッカード・エンタープライズ)は、長い歴史を持つHPのDNAを受け継ぎつつ、現代のクラウド時代に最適化した進化を続けています。
サーバーやストレージといった信頼性の高いハードウェアに加え、「HPE GreenLake」のような革新的なサービスモデルを提供している点が最大の特徴です。
特にハイブリッドクラウド環境の構築や、AI活用のための計算基盤を求める企業にとって、HPEは欠かせない選択肢の一つとなっています。
セキュリティ、AI運用、サステナビリティといった多角的な強みを持つHPEは、今後もITインフラ市場のリーダーとして業界を牽引し続けるでしょう。
自社のIT戦略を見直す際には、HPEが提供するソリューションが大きな助けになるはずです。
