ITシステムを支えるストレージの性能を評価する際、必ずと言っていいほど登場する言葉が「シーケンシャルアクセス」です。

普段、私たちがパソコンやスマートフォンで大きなファイルを移動させたり、動画を再生したりする際、このアクセス方式が重要な役割を果たしています。

シーケンシャルアクセスは、データの読み書きを効率化するための基本概念であり、ストレージの種類によってその特性が大きく異なります。

本記事では、シーケンシャルアクセスの仕組みやメリット、そして対極にあるランダムアクセスとの違いについて、初心者の方にも分かりやすく詳しく解説します。

シーケンシャルアクセスとは何か

シーケンシャルアクセスとは、記憶媒体上のデータを先頭から順番に、連続して読み書きする方式のことです。

日本語では「順次アクセス」や「線形アクセス(リニアアクセス)」とも呼ばれます。

このアクセス方式をイメージする際に最も分かりやすい例は、かつて主流だったカセットテープやビデオテープです。

テープに記録された特定のシーンを見たい場合、最初から順番に早送りをして、目的の場所にたどり着く必要があります。

このように、物理的または論理的な順序に従ってデータに触れていくのがシーケンシャルアクセスの特徴です。

現代のコンピュータストレージであるHDD(ハードディスクドライブ)やSSD(ソリッドステートドライブ)においても、この概念は非常に重要です。

OSがファイルを保存する際、なるべく連続した領域にデータを配置しようとするのは、このシーケンシャルアクセスを効率化するためです。

シーケンシャルリードとシーケンシャルライト

シーケンシャルアクセスには、読み込みを指す「シーケンシャルリード」と、書き込みを指す「シーケンシャルライト」の2種類があります。

多くのストレージ製品のスペック表には、最大転送速度としてこの2つの数値が記載されています。

例えば「リード 7,000MB/s」と記載されている場合、それは連続したデータを読み出す際の理論上の最高速度を示しています。

大量のデータを一度に処理する場合、このシーケンシャルアクセスの性能が高いほど、作業時間は短縮されます。

デバイスによるシーケンシャルアクセスの仕組みの違い

シーケンシャルアクセスの効率は、使用するストレージデバイスの物理的な構造によって大きく変わります。

HDDにおけるシーケンシャルアクセス

HDDは、磁気ディスク(プラッタ)を高速で回転させ、磁気ヘッドを移動させてデータを読み書きします。

シーケンシャルアクセスの場合、ヘッドを一度固定すれば、ディスクの回転に合わせて連続的にデータを取得できます。

ヘッドをあちこちに移動させる必要がないため、物理的な待ち時間が発生しにくく、HDDの性能を最大限に引き出すことができます。

そのため、HDDは構造的にシーケンシャルアクセスを得意とするデバイスであると言えます。

SSDにおけるシーケンシャルアクセス

SSDにはHDDのような物理的な駆動パーツが存在せず、フラッシュメモリチップ上でデータのやり取りを行います。

物理的なヘッドの移動がないため、一見すると順序は関係ないように思えますが、実はSSDでもシーケンシャルアクセスは高速です。

SSDのコントローラは、連続したデータを複数のメモリチップに分散して並列処理する仕組みを持っています。

この並列処理機能がフルに活用されるため、SSDにおいてもシーケンシャルアクセスは最も高速なアクセス方式となります。

シーケンシャルアクセスとランダムアクセスの違い

ストレージの性能を語る上で欠かせないのが、シーケンシャルアクセスの対比となる「ランダムアクセス」です。

ランダムアクセスは、記憶領域内のバラバラな位置にあるデータに対して、不連続にアクセスする方式を指します。

ここでは、両者の違いを表にまとめて比較してみましょう。

比較項目シーケンシャルアクセスランダムアクセス
アクセスの順番先頭から連続して順番に行うバラバラな位置に不連続に行う
主な対象データ動画、画像、バックアップファイルOSの起動ファイル、ログ、DB
速度(スループット)非常に高速(MB/sで表記)低速になりやすい(IOPSで表記)
HDDでの負荷ヘッド移動が少なく負荷が低いヘッド移動が多く負荷が高い
SSDでの挙動並列処理により最高速が出るコントローラの処理負荷が増える

なぜランダムアクセスは遅いのか

ランダムアクセスがシーケンシャルアクセスに比べて遅くなる理由は、アクセスごとに「データの場所を探す時間」が発生するためです。

HDDの場合、磁気ヘッドを目的のトラックに移動させる「シークタイム」と、目的のデータが回ってくるまでの「回転待ち時間」が生じます。

SSDであっても、細かなデータの位置情報を管理テーブルから参照するオーバーヘッドが発生します。

日常的なPC操作、例えばブラウザの起動やアプリの読み込みは、小さなファイルが多数読み込まれるため、ランダムアクセスの性能が体感速度に直結します。

一方、動画編集や大容量ゲームのインストールなどでは、シーケンシャルアクセスの性能が重要になります。

シーケンシャルアクセス性能が重視される場面

シーケンシャルアクセスの強みが発揮される具体的なシーンをいくつか挙げてみましょう。

動画編集と高解像度メディアの再生

4Kや8Kといった高解像度の動画ファイルは、ファイルサイズが非常に大きくなります。

これらのファイルを再生したり、編集ソフトのタイムライン上でプレビューしたりする場合、ストレージから大量のデータを連続して読み出す必要があります。

シーケンシャルリードが遅いストレージでは、動画のコマ落ちや読み込み待ちが発生してしまいます。

データのバックアップとリストア

システムのバックアップやデータの同期を行う際は、数GBから数TBのデータを一気に書き込みます。

このプロセスはほぼ純粋なシーケンシャルライトとして処理されます。

サーバー運用の現場では、バックアップ時間を短縮するために、シーケンシャル性能に優れたストレージ構成が選ばれます。

大容量ファイルのコピーと移動

外部ドライブに映画のファイルや写真フォルダをコピーする際も、シーケンシャル性能が重要です。

最近のUSBメモリや外付けSSDの広告で「最大読み込み速度〇〇MB/s」と謳われているのは、このシーケンシャルアクセスの数値を指しています。

シーケンシャル性能を測定する方法

自分のストレージがどの程度のシーケンシャル性能を持っているかは、ベンチマークソフトで簡単に測定できます。

Windows環境で最も一般的なツールは「CrystalDiskMark」です。

このソフトを実行すると、最上段に「SEQ1M Q8T1」のような項目が表示されますが、これがシーケンシャルアクセスの結果です。

text
[Read]
Sequential 1MiB (Q=  8, T= 1):  7400.552 MB/s
Random 4KiB (Q= 32, T=16):   850.124 MB/s

[Write]
Sequential 1MiB (Q=  8, T= 1):  6850.213 MB/s
Random 4KiB (Q= 32, T=16):   720.450 MB/s

上記の例では、シーケンシャルリードが約7,400MB/sとなっており、非常に高性能なNVMe SSDであることが分かります。

ここで注目すべきは、シーケンシャルアクセスとランダムアクセス(4KiB)の数値の圧倒的な差です。

このように、ストレージの最高性能は常にシーケンシャルアクセスによって示されるという点を覚えておきましょう。

シーケンシャルアクセスを最適化する技術

ストレージの性能を最大限に引き出すために、システム側でも様々な工夫がなされています。

デフラグメンテーション(HDD向け)

HDDにおいて、データがディスク上のあちこちに散らばってしまう状態を「フラグメンテーション(断片化)」と呼びます。

断片化が起こると、本来シーケンシャルアクセスで済むはずの読み込みがランダムアクセスに変わってしまい、速度が大幅に低下します。

デフラグは、この断片化したデータを並べ替えて連続した状態に戻し、シーケンシャルアクセスの効率を回復させる作業です。

NVMeプロトコルの採用

従来のSATA接続に代わり、現代の主流となっているNVMe(Non-Volatile Memory express)は、SSDの高速なシーケンシャルアクセスを前提に設計されています。

PCI Expressバスを直接利用することで、帯域幅の制限を取り払い、圧倒的なスループットを実現しています。

これにより、シーケンシャルリードの速度はSATA SSDの10倍以上にまで進化しました。

ファイルシステムの役割

NTFSやAPFS、ext4といったファイルシステムも、なるべくデータを連続したブロックに書き込むようなアルゴリズムを持っています。

空き容量が極端に少なくなると、連続した領域を確保できなくなり、シーケンシャルアクセス性能が低下する傾向があります。

そのため、ストレージのパフォーマンスを維持するには、ある程度の空き容量(20%程度)を確保しておくことが推奨されます。

ストレージの進化とアクセスの未来

かつては「シーケンシャルは速い、ランダムは極端に遅い」というのがストレージの常識でした。

しかし、SSDの低価格化と高性能化により、その差は少しずつ縮まりつつあります。

特にハイエンドのNVMe SSDでは、ランダムアクセスであっても一昔前のシーケンシャルアクセスを凌駕する速度が出ています。

それでもなお、ビッグデータ解析やAIの学習、高画質コンテンツの配信など、扱うデータの規模が巨大化する現代において、シーケンシャルアクセスの重要性は衰えていません。

一度に大量のデータを効率よく運ぶ「スループット」の概念は、今後もITインフラの根幹を支え続けるでしょう。

まとめ

シーケンシャルアクセスは、ストレージ上のデータを先頭から順に読み書きする、最も基本的なデータアクセス方式です。

HDDでは物理的なヘッド移動を抑えることで高速化を実現し、SSDでは並列処理を最大限に活用することで驚異的な速度を叩き出します。

バラバラな場所を読み書きするランダムアクセスとは対照的な性質を持ち、主に大容量ファイルの扱いに適しています。

PCのスペック表を見る際には、シーケンシャルアクセスの数値が「大きなファイルを扱う際の実力」であることを思い出してください。

一方で、OSやアプリの機敏な動作にはランダム性能も欠かせないため、両者のバランスを理解することが重要です。

ストレージ技術は日々進化していますが、シーケンシャルアクセスという概念を理解しておくことは、最適なハードウェア選びやトラブルシューティングに大いに役立つはずです。